2010年10月14日木曜日

絵画は広がっており、グラフィックデザインは閉じている。

慶應SFCで小説家の平野啓一郎さんによる「文学とデザイン」を絡めた講演があった。その中でいくつも興味深い考察があったのだが、特に興味深かった平野さんの発言は、絵画は額縁から外に広がる性質を持っている。というもの、例えば「ミレーの落ち穂拾い」を例にすると、農地に落ち残った稲穂を拾い集めるという農民の逞しい生活が描かれているが、その農地は切れ目無く広がっているはずで、絵画は現実社会の一部を切り取っている。


一方グラフィックデザインはその四角い枠の平面の上に表示される文字や画像、配色などを使用し、情報やメッセージを伝達する手段として制作し、伝えたい情報をちりばめるが、その枠の外には世界はなく、伝えたい情報を閉じ込める性質を持っている。僕はメモを取る習慣がないので正確な記憶ではないが、そのような話で「絵画とグラフィックデザイン」の違いを明確に分析されたのには驚いた。僕はデザインの世界で40年以上にも渡り仕事をしてきたが、「絵画とグラフィックデザイン」の違いを、このように明確には認識していなかった。あらためて分野の違う小説家の平野さんに「デザインとは何か」を教えられた。この拙い表現の続きは平野さんのコメントを待とう。

画像上は、農民画の画家ミレー屈指の名作として知られる『落穂拾い』。
画像下はロトチェンコ

平野啓一郎さん@hiranok
小説家。1975年愛知県生まれ。その後、北九州市で育つ。京都大学在学中にデビュー作『日蝕』で芥川賞受賞。著書は、長篇小説『葬送』、『決壊』、『ドーン』、エッセイ集『モノローグ』、対談集『ディアローグ』、新書『本の読み方』、『マイルス・デイヴィスとは誰か』など。最新長篇『かたちだけの愛』は、この秋に単行本化予定。





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