2018年8月11日土曜日

「なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?」というbtrax社の分析が面白い。

大企業のデザインセンターから役員が出る企業は未だ10社に満たないだろう。「なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?」というbtrax社の分析が面白い。

最近は海外を中心にエンジニアと共に、デザイナーの需要が高まっている。理由はシンプルで、プロダクトに加え、企業経営にとってデザイン思考やサービスデザインなど、「デザイン」の言葉で表現されるマインドセットやスキルが求められているからだ。と説明されている。「デザイナーの待遇調査結果」で比較するとよくわかる。

デザイナーの待遇調査結果 (中間値による算出):

• 世界のデザイナー平均年収額は$91,000
• アメリカのデザイナー平均年収額は$99,000
• カリフォルニア州のデザイナー平均年収額は$128,000
• アメリカ国内デザイナーの1週間の平均労働時間: 42
• 29歳以下のデザイナーの平均年収額は$71,000
• 30-50歳のデザイナーの平均年収額は$116,000
• 51歳-のデザイナーの平均年収額は$94,000
• 10年以上経験のあるデザイナーの平均年収額は$114,000
• 年間平均昇給額は$2,890















ある調査では、日本のグラフィックデザイナーの年収の平均値は300〜430万円。日本ではデザイナーに対して低い待遇になっていることがわかる。


その理由は、

【企業側の問題】

「デザインを上手にお金に変換できていない」

そもそもなぜアメリカ、特にカリフォルニア州でデザイナーの待遇が良いのか。答えは、デザインをビジネスに最大限活用できているから。言い換えると、デザイナーの能力を経営側がビジネス=お金に変換することを知っているから。

「組織の中でデザイナーのポジションが確立されていない」

経営者がデザインの重要性を理解していない場合、企業の中でのデザイナーの立ち位置が非常に難しくなる。そうなってくると、デザイナーが経営の根幹に関わることは難しい。

参考: 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職

「ユーザー体験を真剣に追求できていない」

冒頭のリサーチ結果からも分かる通り、最も待遇が良いデザイナー職の一つが”UXデザイナー”である。正しいユーザー体験を設計するのが彼らの仕事だが、プロダクトのサービス化が進むここ数年で、最も注目されているデザイナー職の一つと言える。つまりUXそのもがプロダクトだ。

【デザイナー側の問題】

時代とともに変化するデザイナーに求められるスキルや考え方に追いついていない。「デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ」デザイナーは新しいスキルをどんどん導入していく必要がある。

参考: 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる

日本のデザイナーは総じてスキルレベルが高い。これはおそらく世界的に見ても間違いなく、細部にまでこだわる事のできる日本のデザイナーの能力はもっと評価されるべき。その一方で、一般的なデザイン能力は高いが、他にまねのできないユニークな価値が提供できているケースはまだまだ少ない。

「価値のあるデザイン教育がされていない」

サンフランシスコの凄さの一つが、デザインスクールの数と質だろう。それも、最新のスキルを即戦力で使える人材が街にゴロゴロいる。これは、現役のデザイナーがビジネスとデザインの両方の側面で教えているのが理由。

以上btrax社のレポートを抜き書きし一部加筆してみた。
この投稿の転載希望は私ではなく、直接筆者のBrandon K. Hillまでお願いします。
お問い合わせは tokyo@btrax.comまで。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
http://blog.btrax.com/jp/2018/05/29/designers-in-japan/


2018年8月8日水曜日

デザインのコストパーフォーマンス「デザイン経営」宣言

経済産業省・特許庁が行った「産業競争力とデザインを考える研究会」のレポートを見て、私が知る限りデザインの効果をKPIで説明されたのは初めてだ。大企業のデザインセンターは経営陣から常にその経営上の効果を数値化することを求められる。その課題に答えたのがこのレポートだ。簡単に言うと「デザインのコストパーフォーマンス」が証明されたことになる。そのデータはBritish Design Councilがまとめたもの。

”デザイン”という言葉自体の概念も時代と共に変化している。これまでの”絵を描く”ことから、デザイン的考え方を事業の為の一つの戦略として活用するケースが増えている現在。20世紀のデザインは表面やパッケージを美しくする事だった。デザインシンキングを初めデザイン的観点から何らかの問題を改善すること全般を指すようになってきた。その意味で言うとマーケティング同様、デザインも企業活動全般に関わっているはずだ。














簡単なプロセスは、デザインへの投資→デザイン力の向上→ブランド力向上・イノベーション創出→競争力の強化となり生み出されたイノベーションやブランド力は、効果的にデザインされた顧客とのコミュケーションを通じて市場に波及し、企業に収益をもたらすということになる。
http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf



2018年7月28日土曜日

駅の「ガムテープ案内表示」を作りだした佐藤修悦さんのフォント「修悦体」

昨日アドミュージアム東京の裏アーカイブProjectで出演者の一人として出たのだが、ゲストから頂いた情報が面白かった。それはガムテープで作るフォント「修悦体」だ。

2004年、JR東日本新宿駅東口で行われていた部分改築工事の際、鉄板の壁がいたるところに立っていたため迷路のような状況となっていた駅に誘導係として配置された佐藤が「声を使っての実際の誘導だけでは対応できない」として、ガムテープを使った案内表示を作り始めたのが「修悦体」の始まりだ。駅にある材料だけで作ることが清い。














修悦さん 「僕が今の仕事(駅の警備)に就いて、13~4年経つんですよ。新宿駅に最初に行ったのが、2002年くらいかな。最初の勤務が新宿駅でね、構内が工事中で利用客をメガホンで誘導してたんですよね。ものすごい数の人が行き来してるでしょ。それを声だけで誘導するのは大変なんですよ。まあ、ほとんどの人に声が届かないじゃないですか。それで、目立つ案内表示を作ろうと思ったんです」















修悦さん 「自分でも思うんですよ。『頼まれてもいないのに』って。でも、頼まれてもいないのに作るのは、お客さん(利用客)目線で安全を考えたら、やっぱり必要なんですよ。あった方が便利だし、高齢者にはとくに必要だと思っている」新宿駅で始めた時は角張った文字だったんですが、日暮里駅に着任してから、角をなくすことを研究してだんだん丸みを帯びるようになってきました。














それにしても、とてもわかり易いガムテープ文字。一体どうやって描かれているのだろうか? 佐藤さんの説明によると、まず隙間なくガムテープを貼り、その上からカッターで文字を切り出すとのこと。







当初は駅からの指示や許可は無かったが、無断で駅の番線表示のみを始めたところ、駅員に褒められ、許可が出たことから正式に製作を始めたという。当初、工事現場にあったガムテープは白・黒・黄の3色しかなかったが、佐藤による赤・青・緑の3色の申請が認められ、電車の色に合わせた案内板の作成が可能となった。
















岩手県出身。2003年、JR新宿駅の工事現場で警備員として勤務の傍ら、ガムテープを使った案内標識を作り始める。見やすく温かみのある独特の字体がインターネットや口コミで話題となり、「修悦体」として人気を確立。2007年よりJR日暮里駅で同じく業務の傍ら、「修悦体」の制作を手がけた。


2018年7月27日金曜日

ナルシッサスの神話と虚栄心の危険性を呼び起こす微妙なメタファーは草間彌生らしい。

















ナルシッサスガーデンで開催されている草間弥生のインスタレーション。ナルシッサスガーデン周辺は都市の住人たちが夏に避難する大都会の生活から休息を求める休暇の場所だ。 9月3日まで、Fort Tildenの古い列車の倉庫でこの作品を見ることが出来る。
















ミラー効果を生み出す1500個のスチール球を繰り返しグループ分けしたものだ。 歩いている間に、観客は繰り返しで爽快なイメージを体験できる。ハリケーンによって破壊され荒廃した小屋も体験できる。 ナルシッサスの神話と虚栄心の危険性を呼び起こす微妙なメタファーは草間彌生らしい。













http://www.fubiz.net/


2018年7月24日火曜日

アーティストは、「人類の世界の見え方を変えてきた」そして、浮世絵が世界ではじめて雨を線で描いた。猪子寿之

猪子寿之さんのアートの話はかなり面白い。特に西洋のアートと日本のアートとの違いをサイエンスを使って説明しているのが面白い。

猪子:なんでなんだろう笑 ピカソなんかは現れて100年くらい経ってますけど、何十年か経った時に、美の概念、美の基準を変えていくものを探しているんですかね。語弊がある言い方かもしれないですが、アートって究極「誰が美の基準を変えるのか」という世界なんだと思うんです。

猪子:大前提として、歴史に名前が残っている人って、サイエンティストか、革命的な大規模な国家を作った人か、アーティストじゃないですか。革命家はわかりやすいですよね。サイエンティストもわかるでしょ。でもアーティストはなんで歴史に名が残っているんだろうって思ってるんじゃないですか
猪子:アーティストって、サイエンティストと似ているんですよ。

サイエンティストのおかげで、人類の見えている世界は広がってきたと思うんです。例えば、人間の目。肉眼なんてフォーカス範囲が浅くて狭い。
目の前に指を出されると、僕の顔が隠れて見えなくなってしまうくらい。でも、今、スーパーボールを思いっきり投げても、みんな見えると思うんです。

それって全員が物理の法則をなんとなく共有財産として持っているから、予測がついて見えているんです。その知識を持つ以前は具体的に見える範囲が狭かったのに、サイエンティストのおかげで見える範囲が広がった。

サイエンティストは、人類の見える範囲を広げてきたと思うんです。対して、アーティストは、「人類の世界の見え方を変えてきた」と思うんです。例えば、「雨を描いてください」と言われたら描けますよね。
堀江:雨 うん、描けるだろうね。
猪子:それって、人類がそう見えていると思い込んでいるから描けるわけなんですよ。1877年に描かれた有名な絵があります。タイトルは『パリの通り、雨」。
明らかに雨の日のパリを描いているわけです。

ギュスターヴ・カイユボット、《パリの通り、雨》、1877年

















堀江:雨が見えない。
猪子:これ、雨が描かれてないですよ。ぼんやりとしか。描かれているのは傘を差す人と雨で濡れた石畳の路面。この時代は、こういう風に雨が見えていたわけです。実は同じ頃に浮世絵が世界ではじめて雨を線で描いているんです。

堀江:なるほどね。
猪子:正確に言うと、いきなりではなく、100年くらい前から無名の浮世絵師が描きはじめていて、そしてみんなが知っている歌川広重の『大はしあたけの夕立」が描かれるわけです。
堀江:浮世絵は版画だから、こういう表現になったんでしょ。
猪子:いやいやいやいや笑 説明すると長くなりますが、違います 
堀江:違うの
猪子:ちょっと難しい話になりますが、僕らは自分の目のフォーカス範囲がそんなに狭くて浅いとは思っていない。だから過去まで遡って、目を縦横無尽に動かしたりして見た映像を脳で再構築してると思うんです。































現代人はそれをパースペクティブ遠近法みたいな論理構造で再構築していますが、近代以前の日本は再構築に使う時間が西洋より長かったと思うんですよ。僕の仮説ですけど。だから、線になった。
堀江:時間軸が長いから、雨の点が軌跡になって線になったわけだ。
 https://shingakunet.com/journal/learning/20170327183411/



2018年7月20日金曜日

「デザイン経営」デザインへの投資を行う企業が、高いパ フォーマンスを発揮している事実。

企業のデザインセンターは、常に自らのチームの企業への貢献度の数値化に苦労してきた。営業部門や生産部門のパフォーマンスは比較的数値化しやすい。しかし、デザイン部門のパフォーマンスの数値化は難しく、私が知る限り存在しなかったが、British Design Councilによって実現した。さすがクールブリタニカを生み出した英国だ。

「 デザイン経営 」宣言 経済産業省・特許庁 2018.5.23 産業競争力とデザインを考える研究会の資料から

@「デザイン経営」の定義

「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である。それは、デザインを重要な経営資源として活用し、ブランド力とイノベーション力を向上させる経営の姿である。アップル、ダイソン、良品計画、マツダ、メルカリ、AirbnbなどのBtoC企業のみならず、スリーエム、IBM のようなBtoB企
業も、デザインを企業の経営戦略の中心に据えており、「デザイン経営」の実践企業・成功企業ということが言える。

ここで、「デザイン経営」と呼ぶための必要条件は、以下の2点である。
① 経営チームにデザイン責任者がいること
② 事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
















デザイン責任者とは、製品・サービス・事業が顧客起点で考えられているかどうか、又はブランド形成に資するものであるかどうかを判断し、必要な業務プロセスの変更を具体的に構想するスキルを持つ者をいう。

デザインへの投資→金銭的投資(デザイン部門の予算増加など)および人的投資(組織改編・人材育成プログラムの充実など)を行う。

デザイン力の向上→デザインへの投資により、企業のデザイン力(市場ニーズを適切に捉え、必要な製品・体験を考案する能力)が強化される。

ブランド力向上・イノベーション創出→デザイン力の向上により、自社アセットを活かしながら、市場ニーズに合致した新製品・サービスを生み出すことが可能となる。
製品・サービスを顧客からのフィードバックを受けながら改良することで、イノベーションを創出し、ブランド力が向上する。

競争力の強化→生み出されたイノベーションやブランド力は、効果的にデザインされた顧客とのコミュケーションを通じて市場に波及し、企業に 収益をもたらす。

@デザインの投資効果

[4倍の利益]

[2.1 倍の成⻑]
デザインを重視する企業の株価は、S&P 500全体と比較して、10年間で2.1倍成⻑

[2.0 倍の成⻑]
デザイン賞に登場することの多い企業(166社)の株価は、市場平均(FTSE index )と比較し、10年間で約2倍成⻑
















「デザイン経営」は、 そのリターンに見合うだろうか。各国の調査は「YES」であることを示している。欧米ではデザインへの投資を行う企業パフォーマンスについての研究が行われている。それらはデザインへの投資を行う企業が、高いパ フォーマンスを発揮していることを示している。
例えば、British Design Councilは、デザインに投資すると、その4倍の利益を得られると発表した。また、Design Value Indexは、S&P500全体と比較して過去10年間で2.1倍成⻑したことを明らかにした。その他の調査を見ても、「デザイン経営」を行う会社は高い競争力を保っていることがわかる。これがデザインを取り巻く世界の常識となっている。一方、 日本の経営者がデザインに積極的に取り組んでいるとは言い難い。

(出典) British Design Council “The impact of Design on Stock Market Performance: An Analysis of UK Quoted Companies 1994- 2003, 2004を基に特許庁作成


2018年7月16日月曜日

スキルアップからスキルチェンジへと時代のニーズの変化によって求められるキャリアは変わる。

私は20才から40才まではファッションビジネス、40才から60才まではプロダクトデザインに関わり、50才からはオーバーラップしてインターネットマーケティング、60才から68才までは慶応大学SFCなどでデザイン教育を行った。70才からはコンサルティングやREP(代理店に近い)を始めた。













私のスキルチェンジやジョブチェンジは自然と行われるので、自分ではあまり意識していない。気がついたら業種を乗り越えている。Google, Microsoft, Autodeskなどのテクノロジー企業や、IDEO, Lunar, fuseprojectなどのデザイン会社のデザイナー達が考える。
これから新しく生まれるデザイナーの仕事内容と肩書きである。


















スキルアップからスキルチェンジへと時代のニーズは変わる。AIによって無くなる職業があれば、従来無かったデータサイエンスのような職業も生まれる。 従来のスキルアップ指向からスキルチェンジ指向へ、時代が求める人材は常に変わっていく。
















為末大‏@daijapanさん のTwitterから 、スキルのテーマに対して示唆に富んだ考察だ。「キャリアをうまく移行できる人は、職業特有のスキルを学んでいくだけではなく、成功の要諦を抑えてそれを毎回微調整できる人なのではないかと思う。上にはスキルが乗っかっているが、根底に脈々とつらなる再現性の水脈があるのではないか」














つまり成功の回路(再現性の水脈)を持っている人は、スキルチェンジに対応し常に成功し続けるということだ。

以下時代の変化とともに進化するデザイナーの仕事の一例

1. Non-UI
デザイナーUIを使わない方法、例えばジェスチャーや視点の動きなどで操作を行なうシステムのデザインを司るのがNon-UI デザイナーの仕事になる。

2. VRデザイナー
リアルタイムで生成される3Dオブジェクトの表示方法や、人工知能 (AI) をベースとしたシステムを活用してVR環境内を動き回るアバターキャラクターのデザインなど、これまでには存在していなかったタイプのスキルが必要とされる。

3. ドローンエクスペリエンスデザイナー
操作性や利用価値、セキュリティーやプライバシーをどのようにして保持するかなどのデザイン。

4. AIデザイナー
人工知能や機械学習などのシステムが得意とするところと、人間が得意な部分を掛け合わせ、システムにもより良いクリエイティブ作成を教える

5. プロセスデザイナー
企業がユーザーに求められるプロダクトを作成する際のプロセス全てをリードするのがプロセスデザイナーの仕事

6. カスタマーサービスデザイナー
プロダクトのサービス化が進むに合わせ、顧客体験が重要になってくる。顧客満足を得るには製品の品質に加えて優れた購入体験やサポート体験が必須。その点ではカスタマーサービスも重要な”エクスペリエンス”。

7. CDO (Chief Design Officer)
マネージャーや事業主任など、リーダーの役割をする人達にとっても、これからはデザイン的考えがとても重要なスキルになってくる
引用や参考はhttp://btrax.com/jp/