1980年代後半のある日、バルセロナのガウディが設計したカサ・ミラに居住し、1Fにデザイン雑貨店を経営し2Fにアートギャラリーを持つ、静かで知的なスペイン人オーナーから「WATER STUDIO展をやらないか?」と依頼があった。ロケーションが東京でもニューヨークでもなくパリやロンドンでもないバルセロナという都市が気に入って快諾した。この話は別途ブログに詳しく書くことにする。視察を兼ねて行ってみるとカサ・ミラという建築は素晴らしい巨大な彫刻のように見え深く感動した。
カサ・ミラは、バルセロナのグラシア通りにある建築物で、ガウディが54歳の時に設計し1905年前後に建てられた。カサ・ミラは直線部分をまったくもたない非常に印象的な建造物だ。人工物でありながら、砂丘や波のような自然物の雰囲気をもっていた。一つ一つ異なるバルコニーは、鉄という素材を使いながら、まるで波に漂う海藻のような、柔らかな造形を生み出している。内側は天井も壁もどこも波打ち、まるで海底にいるようだ。屋上には、独特の加工をされた煙突や階段室が立ち並び、月面か夢の中の風景にもたとえられる。ルーカスもここからダースベイダーの仮面を考えついたというエピソードを持つ。
しかし近年、ある人物の存在がガウディの解釈論を説く大きなヒントとして注目されている。その人物とは、ガウディの弟子であった、「ジョゼップ・マリア・ジュジョール」だ。ガウディ作品の特徴として、「自由で大胆な曲線」や「カラフルな色彩」などが挙げられるが、実はその「カラフルな色彩」の装飾を担当していたのが「もうひとりのガウディ」と呼ばれたジュジョール。WOWOWで見た歴史美術ドキュメンタリー番組「もうひとりのガウディ もうひとつのサグラダ・ファミリア」は、歴史から一度姿を消したジュジョールとガウディの固く深い絆を解き明かし、「カサ・ミラ」「グエル公園」など、世に残されたガウディ作品に、ジュジョールのデザインの大きな痕跡を追っていた。とても素晴らしい番組だった。
ジュゼップ・マリア・ジュジョールはスペイン、カタルーニャの建築家。アントニ・ガウディの協力者として、建築にとどまらず家具デザインや絵画などの分野でも、その色彩感覚、造形的な才能を発揮させた。ガウディと施主達とがもめたため建設工事がとまってしまったカサ・ミラを完成させたのはジュジョールである。彼は、主にガウディの右腕としておおいに才能を発揮した。例えば、「ガウディの象徴」ともされている、「砕けたタイルを散りばめたオブジェ」。そういうカラフルなテキスタイルのような装飾は、実はガウディではなくジュジョールが考案し手がけた。おまかな設計図はあるが、ほとんど現場で食器やタイルを砕き貼り付けて作ったようだ。また、グエル公園のベンチや広場の天井のオブジェ、カサ・ミラの波打った黒い手すり等も手がけている。ガウディも、この才気溢れる自分よりも27才若い建築家を、「私の弟」と人に紹介し、たいそう可愛がっていたようだ。
Casa Mila 'La Pedrera" Gaudi Barcelona
最初の外観の映像はカメラの手ぶれが見難いですが中のスライドショーは必見!
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