2010年11月25日木曜日

20世紀の工業デザインとは基本的にはパッケージデザインであった。では21世紀のデザインは?

僕は自他共に認めるロボット好きである。それは僕だけでなく何かの役に立つわけでもない人型ロボットに、これだけ夢中になる国民も世界には少ないのではないのか。2002年に発表された山中デザイン「morph3」これほど美しいデザインを持つロボットを僕はかつて見たことが無い。この「morph3」を通して、山中俊治さんのデザインの考え方の一端に触れる。以下の文章は山中さん自身が書いたものの抜粋や、僕がご本人から聞いた言葉を出来るだけ忠実に再編集した。(2008年から慶應SFCで、お互い教員同士でもある)


「20世紀の工業デザインとは基本的にはパッケージデザインである。」と山中さんは言い切る。例えばフェラーリの機能美といっても、所詮それは彫刻的な美しさであって、真の意味でテクノロジーとデザインが一体化しているわけではない。素朴なマシン・テクノロジーを洗練させて見せる衣装としてデザインが使われているだけなのだ。それが最近はマイクロマシーンやナノテクノロジーのように、それ自体に生命感をもった繊細なテクノロジーが登場しはじめている。この新しいテクノロジーの機能を丁寧にデザインすれば、いままでの(用の美)とは違う、21世紀の機能美が表現できるはずだと語る。今まさに、20世紀とは明らかに違うテクノロジーとデザインの関係が生まれつつある。そしてその変化を、我々は山中さんの仕事を通じて実感することができる。また山中さんは美しいものを作るデザイナーであると同時に美しい文章を書く文筆家でもある。

その一例がロボット「morph3」だ。これは単なる人間の姿を模倣したヒューマノイドではない。人工知能の持つさまざまな機能をエンジニアリング的かつデザイン的にロボットの身体化していく、究極の機能美の追求なのである。デザイナーである私がまず手をつけた事は、その身体構造の最適化、合理化によって、古田氏らの基本設計が本来持っている構造上の美しさを引き出すことである。様々な部品を統合し、製作を容易にしつつ、軽量化を実現する。プロダクトデザイナーである私が確信していた事は、構造を最適化し、形状的に洗練させて行けば、おのずと美しい身体に行き当たるはずだという、ある意味オーソドックスな機能美の概念である。

かつて、乗用車や航空機は美意識を持ったエンジニア達によって設計と同時にデザインされていた。乗用車とは何かを探りながらのデザインであればこそ、理想的なデザインが行われた。ヒューマノイドのデザインは、ようやく今からスタートする。私達は新しい人工生命が、人に似たものになるべきかどうかさえ、迷いながら作っている。であればこそmorph 3の身体デザインで試みられたエンジニアリングと美意識の再融合が、美しい人工生命が生まれ立つ未来への一歩となる事を願うものである。 (文章:山中俊治さん)











































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