2011年4月19日火曜日

70年イタリアではエットーレ・ソットサスが「グッド・テイスト」というブルジョワ的な価値観に抵抗し、アンチ・デザインを宣言していた。


誰でも十代の多感な時期に見たり聴いたりしたものが、その後の人生における「感性の軸」になるのではないだろうか。僕が十代の時、世の中は「60年代デザイン」がリアルタイムで溢れていた。僕に影響を与えた60年代デザインとは、すなわち「ポップ」と「宇宙」など、60年代と2011年の今はシンクロニシティーしているように感じる。

その「明るく・軽く・未来的なデザイン」が自分の好きな形や色、素材感などの規準になっているように思う。60年代の「ポップ・デザイン」は、モダン・デザインへの異義申し立てから生まれた。バウハウス以降のモダンデザインが、機能性やシンプルで長持ちすることを重視したのに対し、ポップ・デザインは、長持ちしなくても構わないから、若者の欲望を刺激する「見た目」を重視したのだ。そして、若いデザイナーが同世代の若者に対して発信したところにも魅力を感じた。
代表作Carlton (1981) Ettore Sottsass

































具体的には、イギリスで「ファン・ファニチャー(面白家具)」と呼ばれた段ボール製の安い家具が作られたり、イタリアではエットーレ・ソットサスが「グッド・テイスト」というブルジョワ的な価値観に抵抗し、アンチ・デザインを宣言していた。

70年に発刊されたデザイン誌「ドムス」にはソットサスが書いた面白い記事がある。「モノをデザインするときに、人が何かに気づき、自分を解放する助けにならなければならない。そして人に内なるときめきを感じさせる機能をものに与えることだけを考えなければならない」とある。つまり、デザインされたものを身の回りに置くことが、自己表現の手段となりうると、ソットサスは教えてくれたのである。

















エットレ・ソットサス/1917年オーストリア生まれ。トリノ工科大学卒業。47年ミラノに建築・デザイン事務所を設立。58年にはオリベッティ社のデザインコンサルタントに就任し、同社の先進的なエレクトロニクス戦略に寄与。81年にはアンドレア・ブランツィ、ミケーレ・デ・デルッキとともに前衛デザイングループ「メンフィス」を結成。同年マルコ・ザニーニらとソットサス・アソシエイツを設立し、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど幅広いデザイン活動を続け、数々の名作を世に残した。20071231日ミラノにて死去。亡くなる3 日前まで精力的に仕事をこなしていたという。

「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展 夢見る人が、夢見たデザイン
http://www.2121designsight.jp/program/krst/

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