2016年5月24日火曜日

“「ユニクロはクリエイティブではない」敏腕ジョン・ジェイは何を変えるのか”を読んで、ずいぶん昔にPENの「デザインのたくらみ64」に書いた「ジョン・ジェイ」の文章を読み比べてみた。

Pen0901 デザインのたくらみ64
「ジョン・ジェイ」

ナイキなどの広告を手がけている広告会社、ワイデン&ケネディ(W&K)にジョン・ジェイというクリエイティブ・ディレクターがいる。ここ数年は毎月のように会っているが、彼と僕は91年頃に初めて会っている。彼はオハイオ生れの中国系アメリカ人で「W+K」の経営者の一人だ。

98年に日本にやって来て、ワイデン&ケネディジャパンを設立した。この会社の最初の成功は、98年から2000にかけて流されたユニクロの広告だ。1日3〜4時間しか眠らない。

糸井重里氏が「W+Kと一緒に仕事して思ったけど、日本人の五倍ぐらい働いている。茫洋(ぼうよう)としてわからないっていうところでも泳ぎつづけるよね。」と語り「ワーク・ハード」ぶりがわかる。






















また「W+K」のクリエイティブの特徴は、「その会社の意志決定者に直接話を聞く」、「ドキュメンタリー・タッチ」、「日本国内のクライアントを中心に、広告デザインを行っている」の三点だろう。

企業イメージCMの場合、ジョンは、その会社の意志決定者に直接話を聞く。その方が「広告コミュニケーション」の考え方が明確で、何がクライアントにとって大切な問題なのか、あるいはその問題を解決する意識を共有出来る。

あのジョン特有の真剣なパーソナリティーで問いかけ、クライアントの独自性を突き詰めて考えることで、ナイキやユニクロや公文のユニークなブランド広告が生まれたわけだ。

ユニクロのCMは、当時の柳井社長とジョンが、山口や東京で繰り返し会って、「カジュアルとは?」という事を徹底的に議論した。その結果CMのコンセプトは、「カジュアルはみんなのもの」という民主的な考え方と、「金額は下げてもクォリティーは高い」ブランドにするというもの。

固定カメラの前で、山崎まさよしのような有名な人から、まったく無名な工事現場で働く人にも、「あなたのスタイルを教えてください」とテリー伊藤が質問し、その発言には平等に30秒間あげるという「W+K」らしいドキュメンタリー・タッチ。

今テレビでやっている「公文」のCMは、ビートルズのハロー・グッドバイの音楽に乗って、子供たちを自由に発言させ、ドキュメンタリー・タッチでとらえている。あるバージョンでは6歳の子供が、「野口英世とシュヴァイツァーを足して2で割ったような人になりたい」、「自分で病院を作りたい」と言う。

そして最後に「教室を見に来てください」でくくる。CMに写るKUMONのOが、「考える顔」(thinking face)のロゴマークであり、基本デザインになっている。それは、子供たちの顔であり、大人や社会の人々の顔というメッセージをデザインした。たった30秒の広告のために、この子供一人だけで一時間も撮影し、一本のCMに対して一週間もカメラを回すそうだ。 

「W+K」が加わってから、「公文」のブランド価値は、目を見張るほどに変化を遂げた。昨年も、日本の大学卒業者に対して、企業好感度調査があった。もちろん、上位に名を連ねるのは、ご存知ソニーやトヨタなどだ。そこにランク外だった「公文」が突然トップ20位にランクインしてきた。それは、公文というブランドの著しい変化だった。

一般的には外資の広告会社は、日本に進出している海外の企業を中心にクリエイティブを行っている。しかし、「W+K」がユニークなのは、大半が日本国内(ドメスティク)のクライアントを中心に、クリエイティブを行っている点。そのために、50人ほどのスタッフのほとんどがバイリンガルの日本人クリエイターで構成されている。

結果として、日本の文化や企業に深く切り込む「洞察力」を使い、企業イメージをデザイン出来る。最後にドキュメンタリー・タッチという手法。有名人だけに頼らない、ヨンさまのような、時の人にも頼らない。なぜなら、いまはフィクションよりも、実際のスポーツやニュースなどのほうが「信じられないこと、奇跡のようなこと」がおきていて、人々の心をつかむことが出来る。

ドキュメンタリー・タッチの広告は、フィクションに慣れた見る人にとっては、「この広告が自分に見て欲しいんだな」と思える。そして、視聴者は広告の中に自分を投影しやすいのだろう。

“「ユニクロはクリエイティブではない」敏腕ジョン・ジェイは何を変えるのか”
http://www.fashionsnap.com/inside/uniqlo-johncjay/ 




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