2013年10月14日月曜日

感覚的にはすっかり西洋人になってしまった日本人が「和」を再発見し時代は"和"から"WA"へと"洋魂和才"

江戸庶民の生活や心情を繊細に描いた映画や小説が今も人気だ。少し前になるが映画「たそがれ清兵衛」がヒットしたのも、描かれている清貧の美学が、現代人に逆説的な憧れを抱かせたからだと思う。

江戸時代の日本は、人間と自然が共生し、リサイクルが徹底したエコロジー社会だった。今、僕たちは流行のスローライフの原型を、江戸に見ているのであろう。

しかし、清貧だけが和というわけではない。竜安寺石庭のミニマリズムも和なら、対局にあるデコラティブな日光東照宮も和である。ポップな浮世絵も和なら、スタティックな琳派も和である。















ファッションの世界にもさまざまな和がある。蝶々のプリントをシンボルとした森英恵、折り紙や日本のクラフトなどをコンセプチュアルに再生した三宅一生、大漁旗や鯉のぼりなど日本の民俗文化の面白さを追求した山本寛齋、色や素材で和を表現した山本耀司と川久保玲など、多くのデザイナーが、独自の解釈に基づいた、さまざまな和の魅力を世界に発信してきた。
「132 5.ISSEY MIYAKE」























そういうことを考えながら、ふと、回りを見渡すと、インテリアショップやレストランなどにいわゆる「和モノ」の家具や食器が多くなっていることに気づく。思えば戦後の日本人というのは、生活空間から「和」を徹底的に放逐し、逆に次々と新しい電気製品を買い入れ、アメリカンライフスタイルを模倣してきた。

障子・襖・畳と無縁な無国籍な空間で育ってきた今の若い人が、まるで外国人のような新鮮な目であらためて「和」に関心を向けるのは、無理のないことかもしれない。

明治の頃の日本人は「和魂洋才」といって西洋文化を盛んに取り入れ、それが文明開化であるとしていたが、今は逆に今は逆に「洋魂和才」つまり感覚的にはすっかり西洋人になってしまった日本人が「和」を再発見し、あらためて生活に取り入れているようなところがある。
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さまざまな「和」に注目が集まる中で、最も人気なのが、柳宗悦の提唱した「民芸」を洗練させたようなモダンジャパニーズデザインである。「用の美」というコンセプトでつくられた食器や家具は、骨董趣味とも一線を画していて、現代的な生活空間にもしっくりと馴染む。この新しく再定義されたコンテンポラリーな「和」を、僕はあえて「WA」と表記したいと思う。

















そして、この「WA」のセンスを水面下で醸成させてきたのが、故田中一光がディレクションした「無印良品」だと思う。モノが溢れはじめた80年代初めに登場した「無印良品」は、ダンボールやアルミやプラスチックを生の素材のまま使うことで、日本人が失いかけていた「わびさび」の美学を現代的に蘇らせた。

物質的な「貧しさ」によって、逆に豊かな精神性を感じさせる日本独特の美意識を、安価な雑貨というスタイルで提供し続けてきた功績は大きい。



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