2020年2月25日火曜日

「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」の意味と「みんなに刺さるように」は「誰にも刺さらない」

『パラサイト 半地下の家族』第72回カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞したポン・ジュノ監督のスピーチが感動を呼んでいる。「私が若かりし頃、映画を勉強していた時に深く心に刻まれた言葉がありました。それは「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」ですと語った。これは、私たちの偉大なマーティン・スコセッシの言葉です」と語った。すると会場は大いに盛り上がり、スタンディングオベーションが。言葉を受けたスコセッシ監督は恥ずかしそうに立ち上がりながら、涙ぐんだような表情を浮かべ、ポン・ジュノ監督に拍手で讃えた。

「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」は一般の人には少しわかりにくいと思うので、この言葉の意味を説き明かしてみたい。













「人間はみんな同じではない個人。」と加え多様性のことなんだと考えると、少しわかりやすくなる。このテーマ「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」の意味を考えるために、書籍「世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方」から抜粋した言葉を加える。
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「奇想天外なフランシス・ベーコン」と表現されたアンドレアス・ゴルダーの話が参考になる。

















彼曰くクリエイティビティは周囲の環境から完全に切り離されているという一般的な考え方とは異なる。すでにできている道をたどったほうがいいと言う。つまりクリエイティブな人は、すでにこの世界に存在するクリエイティブの材料(映画、SF小説、過去の巨匠のあらゆるジャンルのデザインやアートなど)や伝統からインスピレーションを吸収している。

つまりクリエイティビティは既存の業績を利用する人々の連鎖の中にあるコラボレーションだという見方だ。

一方心理的な研究では個人的な現象としてとらえている。個人が、対立や衝突という観点から思考を巡らし、伝統あるいは既存の価値観に抵抗するという考え方である。“最も個人的なことが最もクリエイティブなことだ”というスコセッシ監督の考え方に近い。

この二つの考え方、どちらも正しい。というより現実は、私の体験上これらが混在してクリエイティブは行われている。見たことの無いものを作るという言葉は比喩であって、本当のところまるで見たことの無いように見えるものは作れる。ということだろう。












ジブリの鈴木敏夫さんも、「ジブリ映画は日本人向けに特化したからこそ、海外の人に面白がられるようになった」と以前にコメントしていたことがあった。たとえば、千と千尋の神隠しは、八百万神が集まるなんて一神教からしたら理解できないローカルな話。けれどそれがグローバルには未認識の世界観として新鮮にうつり、日本のオリジナリティと考えられた。

「みんなに刺さるように」とメーカーで良く発言されるが、結局そういう商品は誰にも刺さらないみんなが経験している価値観は、ありきたりになってしまうということだ。自分が感じたこと、自分が経験した一次情報こそが、オリジナリティを生み出す源になる。


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