2020年6月1日月曜日

ビラルデルによる木製の彫刻はくぐるスパイラルとループのすごさ



 昨年の夏にポンビドゥセンターのすぐ隣に小さなギャラリーで、ブランクーシのアトリエがある。こちらもミニマル・アートの抽象・簡潔・素朴な作品が印象深いアトリエだ。そのブランクーシの影響を受けたであろうXavier Puente Vilardellはコーヒー色の木のブロックを人目を引く彫刻の形に変えている。





























そのいくつかは建築構造や、風、雨、海の乱れた波によって形作られた他の自然の形に似ている。ブリュッセルに拠点を置くアーティストは、可鍛性の高い素材である松の木を使用している。これにより、正確で湾曲した構造フォームを作成できる。






















一連のYoutubeビデオで、ビラデルは彼のスタジオの周りに仮想訪問者を示す。スタジオには、壁に取り付けられたさまざまな軸と、彼がアートワークを作成するための原材料である木の丸太の山が備わっています。





















彼の彫刻を作成するために、Vilardellは伝統的な切削工具を使用し、各作品を手作業で作ります。彼のスキルと忍耐力により、彼は木のブロックをあらゆる方向にねじれる彫刻された形に変えることができ、ほとんど重力に逆らうように見える。



https://www.thisiscolossal.com/2

2020年5月30日土曜日

COVID-19が変えた人々の心の変化と極端な行動変容を調べてみた。



巨大企業の経営者であるビリオネア。この未曾有のCOVID-19危機に対して、どのような変革の行動を起こしたのか。 4月7日に自らの総資産の1/4以上にあたる10億ドルの新型ウイルス問題対策基金を設立すると発表し、大きな注目を集めた。個人の新型コロナウイルス対策の寄付として最大規模で、傘下の財団などではなく私財から拠出し、資金の元手がツイッター株ではないことなどが話題になった。10億ドルは、ドーシーが共同創業者兼CEOを務める決済サービス企業スクエア(Square)の株式でまかなわれる。
















ツイッターの経営手腕については批判も多かったドーシーは、スクエアのフィンテック事業では高い評価を得ており、今回の支援の裏付けにもなっている。すでに食糧支援組織アメリカズ・フード・ファンドに10万ドルが支払われた。なお、アメリカズ・フード・ファンドは4月5日、レオナルド・ディカプリオ、ローレン・パウエル・ジョブズ(故 スティーブ・ジョブズ夫人)、アップル、フォード財団の計1200万ドルの出資で設立された。

パンデミックに揺れる人々の心の変化のプロセスがステージ1からステージ5に分類されている。ステージ1:混乱・動揺、ステージ2:変化への対応、ステージ3:順応・適応、ステージ4:収束の兆し、ステージ5:収束後の生活へ。
















目に見えないウィルスに命を奪われる恐怖による心の揺れは案外無自覚な人が多いが確実にストレスとなり人々に意外な行動をとらせる。人々の感情は、ストレスや無力感などが強い日本に対し、米国では一旦ネガティブに振れた心情が徐々に通常に戻りつつある。まだパンデミックが終了したとは言えないのに。。

まず著名なビリオネアたちのCOVID-19のパンデミックでの行動や寄付先を分析した記事を読むと、なぜか合計2095人のビリオネアの多くはCOVID-19以降に寄付をしていない。レアケースの一つは桁違いの寄付を発表したのはツイッターとスクエアの共同創業者でCEO、ジャック・ドーシー。ビリオネアランキングでは804位だが、資産の1/4以上にあたる10億ドル(約1070億円)を新型コロナウイルスやほかの課題解決のために寄付すると約束した。

イーロン・マスクはパンデミック後、突然「住宅を所有しない」つもりであるとして、全ての住居を含むほぼ全ての持ち物を売却することを計画しているとツイートした。ウィリー・ウォンカ役で最も有名なジーン・ワイルダーの家で敷地約2700平方メートル、メーンの住宅は約260平方メートルだ。当時の売却希望価格は950万ドル(約10億2000万円)だった。




























私のビジネスパートナーは、ミッドタウンのマンションと、その近辺のオフィスも処分して日本の南の方にセミリタイアすると言い出した。ある友人はリモートワークの恩恵で家族ごと地方都市に移住を決めた。我々は引きこもりの間に、大変なストレスを受けたはずだが、まださほど自覚していないが、実は我々の心はまだ戦闘状態だと思う。

私における大きな心の変化は、一言で言うと「断捨離」だ。遺言状を書き弁護士に預けた。後二年の75才で代表を交代することも決めた。そしてCOVID-19の少し前に自動車の所有と運転をやめた。これは余計な人生のリスクを減らしたいという理由だ。そしてリモートワークが意外と効率が良いことに気がついた。














移動する時間のロスや、過剰な人との付き合いは少し減らと夜は4時間くらい、ランチでは2時間程度削減できる。いわゆる人生の省エネ運転だ。ZOOMでの「好奇心とイノベーション」の出版記念イベントが期待以上数のファンが集まってくれて手応えを感じた。私は本にも書いたが、もうコロナ以前の生活には戻らないと、今でも思う。











今回強く感じたのは、コロナに極端に弱い飲食業のようなビジネスには手を出さない。たとえ第二波が来ようが第三波が来ようが、負けない強いビジネスに業態変革をしたいと思った。簡単に言うと「非接触ビジネス」だ。映像や、書籍や、ファッションなどのコンテンツやプロダクトを自らが作り、特定のファンを大切にした「 D to C 」ビジネスを構築する準備をこのステイホームの時間で準備した。糸井重里さんの「ほぼ日」は良いお手本だ。来月か再来月にはオンラインサロンをDMMで行う準備もしている。




2020年5月25日月曜日

"人工知能を語る前に......そもそも人間の知能って何?"書籍「好奇心とイノベーション」ギリアの代表取締役社長・清水亮さんとの対談


第5回は、「ヒトと AI の共生環境の実現」を目指し設立された ギリアの代表取締役社長・清水亮さんとの対談です。令和時代 の人工知能・AI はどうなるのか、人間の知能を再現できるのか。 人間の知能はどんなものなのかを掘り下げます。


清水 亮 ギリア代表取締役社長

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして 世界を放浪した末、2017 年にソニー CSL、 WiL と共にギリア株式会社を設立、「ヒトと AI の共生環境」の構築に情熱を捧げる。東 京大学先端科学技術研究センター客員研究 員。主な著書に『教養としてのプログラミ ング講座』『よくわかる人工知能』『プログ ラミングバカ一代』など。
















[人工知能を語る前に......そもそも人間の知能って何?]

Siri と話しても虚しいのはなぜか
坂井 :ディープラーニングが注目されるようになってから、何でもかんでも人工知能、AI と呼ばれています。

清水 :僕はむしろ人工知能の概念を広げて、電卓から人工知能と呼んでいいと思っているんです。人工知能とは何か。それは「人間の知能を、どんなものと認識するか」を考えるのと同じことです。人工知能が発展するプロセスは、実は、知能をどう認識するかの進化の話なんですよ。例えば 100 年ほど前だと、集計作業は機械にはできないと思われていたけれど、穴 あきカードを発明して、穴の数を数える機械をつくったら、 13年かかると言われていた集 計期間が 1年半に短縮できた。そうやって人間にしかできないと思われていた知的作業を、 機械を使って効率的にやっていくことに関心が高まっていったんです。穴あきカードをつ くった会社は IBM という名前に変わっていくわけですけれど。

坂井: 人力でやっていた情報処理を、機械が代わりにやることで、高速にできるようになりましたよね。

清水: 集計は足し算ですが、次はもっと難しい計算ができるように考えて計算機ができました。だから電卓は、人工知能を目指す最初の道のりにあるわけです。

坂井 :知能を機械化する試みの始まりですね。

清水: 言葉と言葉の関係性も、計算機上で扱われるようになります。第 2次世界大戦下では、暗号を解く機械がつくられました。有名な話ですが、ドイツの潜水艦 U ボートがど こに現われるかは暗号化されていて、解読のためにイギリス政府は数学者を集めました。 ところが暗号の鍵を解くために、すべてのパターンを総当たりで試そうとすると、一つの 暗号を解読するのに、 1万人の数学者がいても 2000 年かかる。でも20 分以内に解か ないと意味がない。そこで数学者のアラン・チューリングは、人力ではなく暗号解読する 機械を開発して、解読に成功します。

坂井: チューリングは、人工知能の父と呼ばれるようになります。

清水 :ここで知能とは何か、という話に戻しますが、最初は「計算が正確で早い人は賢くて知能が高いから、計算を機械化したら人間のように賢いモノがつくれる」と期待した。 けれど、いざ計算機ができて、計算するスピードが上がっても、「求めていた知能と違う」 となって、人工知能の研究は一度挫折するんです。次に「賢くて知能が高い人は、たくさんのものを知っている。問題を解決する最適な手 段が選べる」という仮説があって、いろんな情報処理方法、アルゴリズムをコンピュータ で実行できるようにしました。けれど、やっぱり求めていた「知能」とは呼べなくて、人 工知能の研究は行き先を見失ってしまった。これが 1990 年代初頭です。

坂井 :人間の思考を機械が再現できているとは言えなかったわけですね。

清水: 例えば、犬と猫の違いを写真だけ見て判断するというのは、アルゴリズムでは実証 できません。でも猫は、相手が猫なのか違うのか、わかるわけですよ。

坂井: 猫にもできることが、人間がつくった人工知能では説明できない、と。

清水 :「知能ってこういうものだよね」と仮説を立てて、それを再現しようとする人工知能の研究と並行して行われてきたのが、理屈はわからないけど生物の構造と同じものを人 工的につくり出して知能を再現しようというアプローチです。チューリングが活躍したの は 1940 年代ですが、同時期にアメリカの神経学者のウォーレン・マカロックは人工 ニューロンを発表します。神経細胞をコンピュータで人工的につくり出して、学習させて 知能を再現しようとしました。

坂井 :これがディープラーニングにつながっていくんですね。

清水 :でも長いこと目が出なくて、人工知能の研究は縮小していきます。僕は小学生の頃から人工知能をつくっていたけれど、就職する頃、人工知能だけで食べていくのはすごく難しくて、それで OS とかゲームの方に進んだんです。

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2020年5月24日日曜日

”そろそろ真剣に「ダイバーシティ」と向きあおう”書籍「好奇心とイノベーション」パナソニック山口有希子 さんの章

第6回は、ヤフーや IBM などで BtoB マーケティングに従事し、 パナソニック コネクティッドソリューションズ社へ移籍した エンタープライズマーケティング本部長の山口有希子さん。100 年の歴史を持つ企業で、人材の多様化、ダイバーシティの推進 や企業風土の変革に挑んでいます。培われてきた同質なカル チャーに甘んじず、異質なものと交じり合おうとすることで、 組織やビジネス、教育にどんな変化が生まれようとしているの か、語り合います。

山口有希子
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 エンタープライズマーケティング本部 本部長
1991 年リクルートコスモス入社。その後、 シスコシステムズ、ヤフージャパンなどで 企業のマーケティングコミュニケーション に従事。日本 IBM デジタルコンテンツマー ケティング & サービス部長を経て、2017 年 12 月より現職。日本アドバタイザーズ 協会 理事 デジタルメディア委員会 委員長。 ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS マーケティング・エフェクティブネス部門 審査員。
















強い組織をつくるには?

[そろそろ真剣に「ダイバーシティ」と向きあおう ]

[ティーンエイジャーのほうが僕より偉いと思っている]

坂井:初めてお会いしたのは、山口さんが IBM にいらした頃ですね。ダイバーシティ をテーマに話を聞くなら山口さんが最適と聞いて。

山口:IBM は、ダイバーシティをすごく推進している会社で、人材を多様にして生産 性を上げていこうとしています。その前に在籍していたヤフーでも、私は 対 で部下の 話を聞く 1on 1 ミーティングを続けていて、いろんな背景とかキャリア観を持つ人た ちを支援して、一人ひとりが持っている力を発揮できるようにしていました。

坂井: 僕は、中国が未来社会のモデルになると思っているから、頻繁に勉強しに行くんですが、女性の社長や副社長が事もなげにいますよね。もはやダイバーシティという言葉自体が必要ないような感じです。

山口: 日本だと女性の抜擢は、わかりやすい組織のダイバーシティですからね。中国の方と話していると、シンプルに成果を出す、稼ぐことに価値を置いている。強いです。

坂井 :中国の企業を見ていると、事業自体もオープンで、社内に資源をとどめずに外に開いているように感じます。例えば、テンセントが出資している「猫眼娯楽」という映画チ ケットをオンライン販売している会社があるんですが、日本で言うとチケットぴあみたい なもので、中国のオンラインチケット販売の 60%が、その会社を通して行われています。 どの映画のチケットが今買われているかをリアルタイムでディスプレイに出していて、そ のデータを分析して販売しています。

山口: 得られたデータを使ってほかの会社と組んで、ビジネスを活性化しているんですね。

坂井 :世界の EC の 4割を占める中国は、様々な行動がデータでとれます。個人情報の扱いも日本と異なりますし。

山口 :扱えるデータがとてつもなく大きくて、しかも既存のシステムが少ないからこそ、中国はいろんなチャレンジが起きやすいんですね。IT で情報が手に入りやすくなって から、「いいビジネスモデル」とずっと言われ続けているのは、チャレンジの数を増やし てその中から学ぶこと。ところが、それを組織のカルチャーとして根付かせて実践できて いるところって、日本だとなかなか.....。

坂井:2019 年 月にトヨタが、ハイブリッド車の特許を無償開放しましたが、あれ はコア技術を他社に渡すことで、ハイブリッド車市場全体を広げていこうとするチャレン ジですよね。とはいえ、日本はまだまだ同質文化。クラシックな国だなと思います。

山口: ある意味、幸せな国なんだと思います。ガラパゴスでいても、それなりの市場規模があったから、そのままでよかったけれど、労働人口が減って生産性が上がらない中で、 変わらなきゃいけません。日本でもベンチャー企業の若者と話すとワクワクします。いろ いろなことにチャレンジをされている方を応援できるようにしたいし、パナソニックのよ うな 100 年企業も変わっていくチャレンジが必要だと感じています。

坂井 :外から見ているとパナソニックは、チャレンジしているなとわかる要素があります。山口さんがいること自体、象徴的ですよ。でもダイバーシティは、甘い話だけじゃなくて、 血だらけになることもある。ダイバーシティの導入期は、いったん生産性も下がるしね。

山口: 今、中途採用も含めていろいろ外からの知見を入れているんですが、カルチャーが入り交じるとやっぱり大変です。お互いに理解できないし。でも、そこを乗り越える中で、 一緒に目指すべき「パーパス(存在意義)」をきちんとつくれるかどうかが、重要だと思っ ています。

坂井 :そう思います。山口さんは、組織の中でのダイバーシティの定義を、今、どのように考えていますか。

山口: 人として幸せに生きるために、自分らしく選択できるような状態が、ダイバーシティだと思います。人々の価値観や生き方が変わってきているにもかかわらず、会社がこれまでの概念や規定ルールにしばられて、アップデートされないと、そのひずみでいろんな人が困ってしまう。そこをどうやったら変えていけるのか。もちろん仕組みの問題もありますが、一番はマネジメントのトップが、どれだけ真剣に ダイバーシティを実現しようとしているかにかかっています。それぞれの人の生き方を もっと自由にしていくことで生産性を上げていくんだ、大きなパーパスに向かって一緒に 頑張っていくんだ、そう心から信じていなければ、絶対に変わらない。働き方改革も一緒 で、ただ服装を自由にしようとか、フリーアドレスにしようとか形だけやっても本質では ありません。

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2020年5月23日土曜日

世界の権威ある名画にマスクを着けさせる

COVID-19の影響で社会は不安定になり、世界中の市民が怯えている。でも一方で世界の権威ある名画にマスクを着けさせるという「いたずら」を楽しむ人々もいる。このダリなど特異の髭がマスクを突き破っていて秀逸だ。フリーダ・カーロの自画像は女性ですが髭があるので有名です。しかし、その髭はマスクで隠れている。ターゲットになったのは、ハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」フリーダ・カーロ「セルフ・ポートレイト絵画の先駆者」アメデオ・クレメンテ・モディリアーニ、グスタフ・クリムト。
サルバドール・ダリ

ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」

ピカソの「泣く女」だろうか?

フリーダ・カーロ「セルフ・ポートレイト絵画の先駆者」マスクの下には髭がある

ゴッホの「星月夜」のマスクをするゴッホ

アメデオ・クレメンテ・モディリアーニ

フリーダ・カーロ


ゴッホ

 ‎レオナルド・ダ・ヴィンチ

グスタフ・クリムト




2020年5月21日木曜日

[中国のサービスを世界が真似る日が来るとは思わなかった]陳暁夏代さん、書籍「好奇心とイノベーション」から

第 3 回目は、コンセプターの坂井直樹さんが、今起きている社会の変化の中でも、少し先の未来で「スタンダード」となり得そうな出来事、従来の慣習を覆すような新しい価値観を探る対談コラム。第3回目は、日本と中国、双方のカルチャーに寄り添ったブランディングや若年層マーケテイングを手がける陳暁夏代さんです。「祖父と孫ぐらいの年齢差」がある二人が、中国の飛び級制度、高齢出産、日本のビジネスマナーやメディアなど多岐にわたり語り合いました。

陳暁夏代 DIGDOG 代表

内モンゴル自治区出身、上海育ち。幼少期 から日本と中国を行き来する。上海・復旦 大学在学中からイベント司会・通訳を行い、 その後上海にて日本向け就職活動イベント の立ち上げや日系企業の中国進出支援に携 わる。2011 年より北京・上海・シンガポー ルにてエンターテインメントイベントを企 画運営。2013 年東京の広告会社に勤務。 2017 年、DIGDOG llc. を立ち上げ、日本 と中国双方における企業の課題解決を行い、 エンターテインメント分野や若年層マーケ ティングを多く手がける。















[中国のサービスを世界が真似る日が来るとは思わなかった]

働き方を変えていかないと、優秀な若い子を採用できない


坂井 :年齢差で言うと、僕らは祖父と孫ぐらい離れているよね。僕は第一次ベビーブーム世代。中学生のときクラスが 15あって、 1クラス50 名いました。

陳暁:1学年で 750 人、多いですね。

坂井:10代の多感な時期に、黒人差別の撤廃を訴える公民権運動とか、ウーマン・リブと かが起こって、マイノリティが解放されるのを目の当たりにしてきた世代です。僕の場合 は、 19歳から 23歳までアメリカで会社をつくってビジネスをしていたし、会社に勤めたこ ともないから、同世代の日本人とはちょっと思考の仕方が違うかもしれない。

陳暁 :私も 19歳から 23歳の頃が、自分の中でもっとも思考が飛躍した時期だと思います。私は生まれは中国で、親も中国人です。幼稚園、小学校と大阪にいて、親の都合なのでそ こに自分の意思はありませんけれど。中学、高校、大学は中国で過ごしました。大学に入っ てからはずっと働いていましたね。最初は政治家や芸能人の通訳や司会をしていました。

坂井: 通訳って、両方の文化をわかっていないと、できないですよ、共感力がないとね。

陳暁 :正確さはもちろんですが、それ以上に“ケア力”が問われますね。相手が気持ちよく会話できるように、ニュアンスを含めて橋渡しする姿勢が、VIP の通訳では大事か もしれないです。それが 19歳、 20歳の頃で、その後はどうせ働くならスキルを身に付けた いと思って、いろんな事業の立ち上げに参加していました。

坂井: 僕は、中国に何度も足を運んでいるし、中国人の親友も多いのだけど、いまだ中国人のマインドについてわかってないところがたくさんあります。

陳暁 :マインドを理解するために、中国の最新トレンドを追いかける必要はないと思うんです、時代とともに淘汰されるものなので。むしろ、中国を外から見るか、中から見るかの問題ではないかと思います。私は、日中両方のことがわかる立場で生きていて、中国に行くときは中国人として発言するし、日本にいるときは日本人として思考します。

日本に ない中国独特の思考というと、“自己人”(ファミリー)というのがありますね。例えば華 僑なら、友達や家族じゃなくても、海外においてはファミリーだと思ったり、一度ファミ リーだと思ったらいろんなルールを無視して優しくしたりと、そういった接し方がありま す。

坂井 :夏代さんも海外に住む中国人だから、華僑だね。

陳暁 :そうですね。海外で中華系の人に会うと打ち解けやすいですし、「お互い華僑だから一緒に商売しよう」という風にすぐなります。英語でいうと「バディ」に近い。例えば 何か損をしても「“自己人”だからいいよ」と、圧倒的に保護の対象になる。そういう気 持ちは中国人文化の中に根付いているかもしれないですね。

坂井 : “自己人”なら、たとえ中国と政治的、軍事的に対立している国に住む人であっても、許しあえる? 

続きは「好奇心とイノベーション」



2020年5月20日水曜日

会社からオフィスが消え、街から強盗が消える?「好奇心とイノベーション」編集工学の松岡正剛さん

コンセプター坂井直樹が、今起きている社会変化の中で、少し 先の未来で「スタンダード」となり得そうな出来事や、従来の 慣習を覆すような新しい価値観を探る対談。第 1 回目は編集 工学者の松岡正剛さんと語り合います。松岡さんの蔵書 2 万冊が 壁一面に広がる編集工学研究所内のブックサロンスペース「本楼」 で対談を行いました。

データが街を安全に、人を倫理的にする

坂井 :これまで「会社」というと、オフィスがあって、社員が通勤するものと思われてきましたけれど、今や仕事もミーティングも、どこにいてもできるようになりました。僕の 会社は、自前のオフィスを完全になくしました。今 71歳(対談当時)ですが、まだもう少 しやりたいことがあったので、極力スタッフを減らして、場所もなくして、コストゼロに 近い形にしたんです。

そのほうが好き勝手できますから。それで海外にばかり行っていま す。オフィス自体をなくす選択をする企業は出てきていて、社員が集まって働くスタイル が崩れれば、会社の未来のスタンダードは、従来とは違うものになるんじゃないかと思い ます。

思い返せば、僕が日産「Be–1 」のコンセプトを出したとき、街中には四角い車しか なくて、奇妙な車と言われましたけれど、今や丸いデザインがスタンダードになりました。 イノベーションというのは、そういう新しいスタンダードをつくることなんじゃないか、 僕らがまだ見ていない未来のスタンダードの兆しが生まれているんじゃないか、そんなことを考えています。

松岡 :そうか、坂井さんも 71歳だ。でも暴走しているね。僕は 74歳(当時)だけれど古稀のときに再暴走を決断しました(笑)。ところで、オフィスで働くとか、通勤するとか、 そういったこと自体すべてがネーションステート(国民国家)の官僚と工場がつくりあげ た「デファクトスタンダード」の塊なんですよ。

定められた規格はないけれど、結果とし て事実上標準化している「バカ常識」みたいなもの。ある部屋ができると、誰もが入口が あるだろう、きっと窓があるだろうと思ってしまい、やがて全体にデファクトスタンダー ドというものができあがります。でも、デファクトスタンダードに埋もれていると、ニュー スタンダードはなかなか生まれてきません。

例えば駅の改札を切符から自動改札に変えた電子マネーのように、新しい発見がいりま す。PC の出現からスマホまで、あるいはミサイルからドローンまで、病気からゲノム 情報まで、この数十年の変化を考えると、既存のスタンダードで埋まり過ぎた時代が長かっ たんだと思います。














坂井: 今、上海へ頻繁に行っているのですが、決済は、ほぼすべて電子マネーで、日本の5年、10 年先の未来を見ている感じがします。QR コードにスマホをかざすだけで決済 できて、現金を持ち歩かないから、ホームレスの人も QR コードを付けてお金を集めて います。強盗も街から消えちゃうわけです、人を襲っても意味がないですから。そういう 状況を目の当たりにすると、「現金通貨」自体がいらなくなってしまうのは確実だと思わ れます。

松岡 : ビットコインがうまくいけば、通貨自体も変わっていくかもしれないね。

坂井:そもそも「現金通貨」が流通しなくなれば、ATM も造幣局も、いずれは銀行も AI などを含むシステムやインフラに吸収される可能性が高くなります。僕から見ると 中国はフィンテックもビッグデータも日本では追いつけないぐらい進んでいて。
「好奇心とイノベーション」に続く