2016年6月13日月曜日

住宅が住み手の身体へと訴えかけ、住み手の身体が主役になる家。荒川修作とマドリン・ギンズが手掛けた「三鷹天命反転住宅」だ。

現代美術家にして建築家の荒川修作とマドリン・ギンズがデザインした全9戸の集合住宅の内外装には14色のビビッドなカラーが施され、大人の土踏まずと子どもの土踏まずの大きさに合わせて2種類の凸凹が施された床は、裸足で歩くと足裏から色々な感触が伝わってくる。













キッチンやバスルーム、それぞれの部屋ごとに異なる素材の床材が使われており、この部屋を歩くだけでも不思議で刺激的な体験を覚える。収納は天井のフックから下げておこなう。荷物に頭をぶつけないように生活するためには、いつも自分の周囲にも気を配らなくてはいけない。

















畳の部屋で寝るのか、それともハンモックで寝るのか。この住宅に住み続けるには、トライ&エラーを繰り返しながら自分にとって心地よい暮らしを考察する必要がある。それが「天命反転住宅(別名・死なないための家)」三鷹天命反転住宅だ。

















三鷹天命反転住宅にはIn Memory of Helen Keller(ヘレンケラーのために)と献辞が捧げられているが、まさしくヘレンケラーの感覚を追体験している。この住宅には、さまざまな身体能力の違いを越えて、住む人それぞれに合った使用方法があり、3歳の子どもが大人より使いこなせる場所もあれば、70歳以上の大人にしかできない動きもある。

















言わば、ひとりひとりがヘレン・ケラーのようになれる可能性を秘めているのだ。それこそが荒川修作とマドリン・ギンズが伝えたかったことだ。

















外観だけでなく、間取りも特徴的だ。リビングの中心にキッチンが据えられ、トイレとシャワールームは開放型。球体の部屋や天井に取り付けられたフック、傾斜や凸凹のついた床や天井まで伸びるポールなど、まるで建物全体がアスレチック場のような構成になっている。住宅が住み手の身体へと訴えかけ、住み手の身体が主役になる家。

















荒川修作は1950年代後半より「反芸術」を掲げて結成された「ネオ・ダダイズム・オルガナイザー」のムーブメントに一時関わっていたが、幼少より「死」という与えられた人間の宿命をのりこえようと(=それ以外に生きる仕事はない、と確信し)、1961年にニューヨークへ渡る。

















渡米後、現代美術の巨匠、マルセル・デュシャンと出会う。荒川は自分が試みようとしていた芸術の世界(表象的な図形・記号・言語を用いた精神の世界の表現・創作)をデュシャンがすでに体現し、突き詰めていたことを知り、それを超えるには身体・肉体に向かわなければならない、というテーマを自身に課すことになる。

















その荒川修作が手がけた建築と聞いて、どんな難しい哲学的なデザインかと思い木や、なんとわかりやすいマルチカラーの建築だった。荒川修作とマドリン・ギンズが手掛けた「三鷹天命反転住宅」だ。なお三鷹天命反転住宅の敷地内に入るためには、事前予約制のたてもの見学会かショートステイプログラムを利用する必要がある。
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