アウディのシンボルとも言えるシングルフレームグリルをデザインし、その後「世界でもっとも美しいクーペ」と評されるA5をかつて担当したデザイナー和田智さんの「日本と欧州の企業デザインの違い」が興味深い。
日米と欧州デザインの差異の起源は100年ほどたどると答えがあり、日米国型の「経営資源としてのデザイン」か欧州「ブランドの価値創造のためのデザイン」に分岐している。
いまの日本のデザインはなぜ「ぱっとしない」のでしょうか?と質問するifs未来研究所の川島蓉子所長と和田智さんの対談から、
和田:経営者がまず。日本企業の中には「これまで見たことがないものが売れる」という発想が、根強くあるからではないでしょうか。
和田:さらに言うと、代替わりした経営者、代替わりしたデザイナーは、前の経営者、前のデザイナーのもとで生まれたデザインを否定したがる。これがまた「デザインは新しくなきゃダメ」という風潮に拍車をかけます。
和田:そもそもヨーロッパには、ヘリテージ(過去からの遺産)という恩恵があって、それを尊重して、次のデザインを考えている。ヘリテージの上に、今があり未来があるという考え方です。
とやりとりは続く。「日米と欧州デザインの差異」において米国は「経営資源としてのデザイン」で経済発展を支えるマーケティング。それに対して欧州は市場における価値の生存法としての「ブランド」をコントロールするためにデザイン活用すると考える。
このデザイン思想の違いは、あのヒットラーが関わっている。1919年にデザインというコンセプトを世界で初めて明確にしたバウハウスと言うデザイン教育機関が、設立後たった14年間の1933年にヒットラー率いるナチスによる弾圧・削減を受け閉鎖に追い込まれる。
その結果ワルター・グロピウスとミース・ファン・デル・ローエはアメリカに亡命し、それぞれハーバード大学、イリノイ工科大学に着任した。そしてバウハウスの思想をインターナショナル・スタイルとして昇華し、アメリカデザイン界で指導的立場を取った。
彼らが米国の消費主義を吸収し、米国的デザイン価値感を形成していったと考えられる。その後「新しくって売れるデザイン」の典型としてレイモンド・ローウィが登場する。
彼は主に米国で活動し、インダストリアルデザインの草分けとして知られる。消費者の中に潜む「新しいものの誘惑と未知のものに対する怖れ」との臨界点が適正なデザインという考え方で「口紅から機関車まで」と言われるように様々な分野で活躍した。
そして欧州に残ったバウハウスのメンター達は「ブランド価値の創造」にデザインをツールとして使った。そこには”ヨーロッパには、ヘリテージ(過去からの遺産)という恩恵がある”という和田さんの発言が繋がる欧州的デザインが今も色濃く残る「ブランドとデザイン」の関係だ。もちろん日本は変化を求め消費を煽る米国型のデザインに影響を受けた。
一部引用:http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20130830/252818/?rt=nocnt
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