マーケティングで、「真実の瞬間」(Moment of truth)という言葉が注目されている。きっかけは、Googleが2010年に発表した「Zero Moment Of Truth 〜 ゼロ番目の真実の瞬間」だ。このZMOT(ジーモット)という言葉が、ネット時代の新しい消費行動を表す概念としてマーケッターの脚光を浴びた。
この想定外のAppleのサービスには改めて驚き、一層Appleの熱狂的ファンになったことは言うまでも無い。後で交換プログラムの対象となっていたことを知ったが、これが私の心臓を突き刺した「真実の瞬間」という顧客体験だった。
「真実の瞬間」(La hora de la verdad)という聞きなれない言葉は「消費行動における重要な顧客接点」をあらわすが、もともとは闘牛用語で「闘牛士が闘牛のとどめを刺す瞬間」を指すものだった。このようにマーケティングには攻撃的な言葉が多い。
ストラテジー、ターゲティング、顧客獲得、競争優位など挙げればいくらでも出てくるが、「真実の瞬間」は、顧客もサービスを行う企業側も幸福にするサービスデザインだ。
赤い布で闘牛を挑発する闘牛士の狙いは、牛の背にある5センチ四方の「針の穴」と呼ばれる部位だ。そのピンポイントのターゲットに垂直に剣を突き刺すと、その剣先は心臓まで達し、闘牛は一瞬にして死を迎える。「真実の瞬間」とは「針の穴」への接触する刹那、いわば闘牛士と闘牛の生死を分かつ決定的な一瞬を表している。
ビジネス用語として「真実の瞬間」という言葉を最初に使ったのは、同名の大ヒット書籍を執筆した名経営者、ヤン・カールソンだ。1981年にスカンジナビア航空の最高経営責任者(CEO)に就任したカールソンは「真実の瞬間」にすべてを賭け、赤字で苦しんでいた同社をわずか一年で立て直した。顧客と接する15秒は企業の勝敗を分ける「真実の瞬間」と言うが今は5秒くらいになっているだろう。
1980年のこと。ヤン・カールソンは、39才という若さでスカンジナビア航空の社長に就任した。そして赤字にあえぐ同社の業績をV字回復させ、超一流のサービス企業としてその名を轟かせる。彼はわずか一年で、同社を根本から変えてしまった。彼の著書『真実の瞬間』に書かれたエピソードが、同社の経営改革を象徴している。
お客様であるピーターソン氏は、コペンハーゲンで重要な商談に参加するため、アーランダ空港に向かうが、到着したとたんに大変なミスに気がついた。航空券をホテルに置き忘れてしまったのだ。
わらにもすがる思いでスカンジナビア航空のチケット係に相談すると、予想外の回答が待っていた。「ご心配はいりません。搭乗カードをお渡しします。仮発行の航空券もそえておきます。ホテルのお部屋番号とコペンハーゲンの連絡先さえ教えていただければ、後はこちらで処理しましょう」まるで執事のようなサービスだ。
係員はすぐさまホテルに電話し、航空券を見つける。そして自社リムジンを手配し、ピーターソンの出発前に航空券が彼の手元に届いた。「ピーターソン様、航空券でございます」。おだやかな声に何より驚いたのは当事者である彼自身だった。 (出所 : ヤン・カールソン「真実の瞬間」より)この顧客は生涯スカンジナビア航空を使うことになるだろう。
顧客の脳裏に刻まれるサービスは、マニュアルからは生まれない。ひとりひとりの事情や感情を配慮し、相手の立場で問題解決できるのは現場の社員だけなのだ。いわゆる「マシーンに負けないタレント」を持たなければ、こういうサービスは生まれないだろう。
続きは、以下で
http://japan.zdnet.com/article/35039013/
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