2010年10月24日日曜日

深澤直人さんの考えるプロダクトデザインの未来は二つの方向。一つは壁の中や建築の中などの空間に取り込まれていく方向性。もう一つは人間の身体の中に取り込まれていく方向性。

2006年の晩秋に深澤直人さんとKDDIデザイニング・スタジオで対談を行った。その中で、プロダクトデザインの未来に対して深澤さんから興味深い話が出た。こういう話だ、僕のプロダクトデザインに対する考え方から言うと、ある程度、今空中に浮いている、中間領域にあるものは、2つの方向に分かれると思います。1つは壁の中や建築の中などの空間に取り込まれていく方向性。もう1つは人間の身体の中に取り込まれていく方向性です。これは紛れもない事実で、逆らうことはできません。ただし、しばらくはケータイに取り込まれていくだろう。


昔の大きなブラウン管のテレビは、液晶やプラズマテレビとしてどんどん薄くなって壁の方に近づき、扇風機という空間に露出していたものは、エアコンとしてだんだん壁に入っていっている。また一方で、昔は大きなテープレコーダーだったものはどんどん小さくなってiPodになり、さらに小型のMP3プレーヤーになって体に近づいていっている。そこに限度はあるが、そういうものの行き先は決まっている。そして、空間に残るものは家具くらいしかない。


ケータイがギリギリまで人間に近づいたときにどうなるかというと、とても人間に近寄りすぎていて難しい。どこまで物理的なインタラクションを起こすか。僕は1つの路線として、カードという基準サイズがあると考えています。そしてその中に自分の心臓部を入れるかというと、別の面でメモリーなりいろいろなものを封入するひとつの単なる箱、物体としてしか存在しなくなる。この話を昨日書いた猪子寿之さんの主張と重ねて考えると、プロダクトデザインの対象になるモノは少なくなることは確かだろう。

ケータイは個人認証が出来、課金出来ることが、何より他のプロダクトより優れている。その特性を活かして、印鑑証明、保険証、免許証、今後はパスポートなどもケータイで済ませる日がくるのかもしれない。現在もケータイにはすでに色々な機能が入ってきた。インターネット、メール、ミュージック・プレイヤー、suicaやedyのような電子マニー、クレジット・カード、テレビ(ワンセグ)、カメラ、ビデオ・カメラ、デジタル・ラジオ、電子書籍、録音機、カーナビなどの電子地図、デジタル写真アルバム、デジタル新聞。


この機能の内、もともとは「質量を持っていたプロダクト」は、カメラ、ビデオカメラ、ラジオ、録音機、カーナビ、パソコン、ミュージックプレイヤーなどで、これらはアプリというユーザーインターフェイスになり「質量を失った」つまりプロダクトデザインの対象ではなくなる。もちろんまだカメラやビデオカメラなどは単機能のプロダクトとして一定の市場を持っている。しかし、今後は「ケータイでいいや」という人も増えてくるだろう。



0 件のコメント:

コメントを投稿