成瀬:50年代、60 年代のアメリカ文学を彩った「ビートジェネレーション」が好きなんで すよ。行き過ぎた資本主義や大量生産・大量消費の世の中に閉塞感を感じた若者が反発し ていくカウンターカルチャーに憧れがあって、ジャック・ケルアックの『路上』なんかを 読んで、アメリカに行きたい、世界を見たいと思ったんです。坂井さんは、そのころの空 気をリアルタイムで感じていらっしゃるんですよね。
坂井 :僕は60 年代後半、サンフランシスコで「Tatoo T–shirt」をつくって売っていました。既存の企業に居場所はないと思って渡米したのが19 歳のとき。ヒッチハイクをして、公園で寝泊まりしたこともありましたね。当時の中産階級は、ネクタイをしめたお父さんとレストランへ食事に行くような生活をしていました。そうした典型的なコンサ バティブなアメリカと、既成の価値観を否定するヒッピーのような新しいジェネレーションが思い切りぶつかった時代です。
成瀬さんは僕よりだいぶ若いけれど、世代を超えて同じようなことに関心を持っている のかもしれないね。 年代は、あらゆるマイノリティを解放する運動が起きました。あれ から 年経った今も LGBT とか環境保護とか、問題は残っているけれど、昔と違うのは、 社会的な動きだったものから、企業や国家の動きになってきている。
成瀬 :僕は、世界一周の旅を終えてから、 歳のときにモバイルメディアの「TABILABO」を立ち上げ、2017 年にトラベルオーディオガイドアプリの「ON THE TRIP」を立ち上げたんですが、ずっと旅に関心を持ち続けているのは、やはりビート ジェネレーションに興味を持ったことが大きいです。社会問題に対して文学でムーブメン トをおこそうとするところが面白いなと。
ケルアックが書いた『ザ・ダルマ・バムズ』に「リュックサック革命」という好きな一節があるんです。アメリカの若者 万人がリュックサックを背負って世界中に飛び出すこ とで、当時の資本主義黄金時代みたいなものを変えていくことを唱えました。実際、アメ リカの若者たちはバックパッカーになって世界をめぐり、その後、ヒッピーが生まれます。
旅をして外を見て戻ってきた人たちが、新しい視点を取り入れてヒッピーのコミューンを つくっていくところにすごく興味を持ったんです。コミューンができるとメディアが生ま れて、その中でヒッピーの生活を成り立たせるための知恵がつまった『ホール・アース・ カタログ』が出てきた。
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坂井 :そうそう、これさえあれば、どこでも生きていけるっていう僕らのバイブル。当時
の編集者の一人と友達なんですよ。
成瀬 :そうなんですか!
坂井: 載っているアイテムは通販で買えるようになっていて、今でいう、グーグルとかア
マゾンみたいな本。
続きは、、、
好奇心とイノベーション 常識を飛び越える人の考え方
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