昨日内覧会があって「21_21デザインサイト」で開かれている「倉俣史朗とエットレ・ソットサス展」に行って来た。言葉では言い表せない深い感動を味わった。こんなにも美しい家具はないとも感じた。また会場設計や照明も、倉俣さんの作品に負けまいと端から端まで美しく行き届いていた。ぜひ皆さんも会場に足を運んで欲しい。それだけの価値がある展覧会だ。
http://www.2121designsight.jp/
倉俣史朗さんが生涯追求したのは、プロダクトを通しての「愛と夢と感性」あるいは「夢心地」だった。日常の空間に、重力から解放されたかのような浮游感と透過感を持ち込んだ。いわゆる「物の質量」を消したかったんだろう。そこが西洋の家具とは大きく違う感覚がある。そして、世界中のデザイン・ミュージアムが、これほどまで欲しがるプロダクトも他には無い。
Miss Blanche 1988
倉俣史朗といえば「ミス・ブランチ」。名前は、テネシー・ウィリアムズ原作の戯曲『欲望という名の電車』の女主人公から。'91年に彼が他界してからもしばらく製作されたが、56脚目で打ち切りとなった。56は彼が人生の時間を止めた年齢と同じだった。'97年にはロンドンのクリスティーズで、$89,000で落札された。
How High The Moon 1986
「時間の軌跡や痕跡を感じるような素材は、僕自身あまり興味がありません。」と、言葉が添えられている。どこにでもあるステールメッシュでつくられた「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」僕の最も好みの倉俣作品だ。名前はデューク・エリントンのジャズ作品に由来。1998年、2シーターが海外のオークションで$24,000で落札され、話題となった。製造にはイシマルと寺田鉄工所が携わり、IDEEで販売された。現在は Vitra 社によって復刻販売されている。スケッチにある猫とネズミが可愛い。
Shiro Kuramata (2)59秒から~
倉俣史朗:1981年、エットレ・ソットサスの誘いで80年代前半を席巻する事になる革命的デザイン運動「メンフィス」に参加する。ソットサスからの手紙はスケッチ2枚だけであったという。この年、新設された日本文化デザイン賞受賞(現在僕も会員の一人)。1983年、工場で大量に出るくずガラスを人工大理石に混ぜ「スターピース」という素材を作る。また、エキスパンドメタル(金網材)を内装や家具に全面的に使い「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」など傑作を生む。代表作「ミス・ブランチ」はほとんど手作りに近く高価だった事もあり56脚しか作られなかった。その数字は彼の享年である。希少という事もあり「ミス・ブランチ」は'97年にはロンドンのクリスティーズで、$89,000で落札された。1990年、フランス文化省芸術文化勲章受章。1991年、急性心不全のため、死去。享年56。
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